資産課税が強化される日本特有の事情とは?その2

不動産コンサルティング

世界の潮流に逆行して、日本だけが相続税が増税されました。この先進各国との方向性の違いの背景には日本特有の「事情」があるからだと推察しています。そしてその「事情」のために日本だけはこれからも相続税がさらに増税に向かう可能性すらあると思います。

日本特有の「事情」とは「日本の財産構成にはふたつの偏りがあること」に起因しています。そのひとつめは「日本の財産構成はシニアの世帯に偏在していること」だと前回書きました。

日本の財産の約7割は50代以上の世帯に偏在しています。日本の人口構成の一大ボリュームゾーンである団塊世代が70代に差し掛かかり、今後さらに少子高齢化が進む中、シニア世帯にますます財産が偏っていくことでしょう。

一方、消費意欲が旺盛な30代40代のいわゆる「子育て世代、マイホーム世代」は財産を持っていません。日本政府としては、消費が増えて景気が活性化するためにもシニアの世帯に眠っている財産を動かしたいという狙いがあります。資産の再分配ですね。
これが相続税の増税につながっていると考えると、この先ますます高齢化が進み、大相続時代を迎えるにあたり、さらなる相続税の増税は十分ありえるでしょう。

これが「日本特有の事情」のひとつめです。

2つめの偏りは「財産内訳の偏り」です。
総務省統計局のグラフの一番左が財産内訳の平均です。

平成26年全国消費実態調査(総務省統計局)
出典平成26年全国消費実態調査(総務省統計局)

合計で約5,600万円ありますが、そのうちの3,991万円が住宅・宅地資産です。つまり、家計資産の約7割は不動産に偏っています。純金融資産が1,038万円ですから、不動産資産は純金融資産のおよそ4倍もあることになります。

日本の資産家や富裕層は不動産資産家なのです。
不動産はあるけれど、キャッシュがない、といういわゆる「地主さん」は数多くいます。こういう方に相続が発生すると多額の相続税がかかるけど納税するためのキャッシュがない、と慌てることになります。

日本以外の先進各国は相続税を廃止したり、税率を軽減したりする流れにある、という話をしましたが、それは富裕層にやさしい税制にすることで、富裕層に自国に留まってもらいたいし、他国の富裕層も自国に呼び込みたいという思惑があるからです。しかし日本の富裕層は不動産資産家です。不動産は持って移動することが出来ません。だから日本は国内に資産を有する資産家からの納税がかなり見込めるわけです。

この家計に膨大な不動産資産があるということが、日本が相続税において独自の相続税の制度設計を進めているもうひとつの「事情」です。

まとめますと、日本の資産の7割は50歳以上のシニア世帯に偏在しています。そしてその7割は不動産です。この莫大な資産がこれから数十年をかけて相続を起点として高齢者世帯から次世代に移転していきます。ここに少し課税するだけで税収が確保できるわけなので相続税を廃止するようなことはなかなか出来ないわけですね。

その相続の際に、資産をどう評価するか、誰に引き継がせるのか、納税資金は確保できているのか、といったことが問題になります。
私たちすべての国民はここに備えておく必要があるわけですが、以前アンケート(第2回の本コラム)でみたように8割以上の人たちは自分たちには関係がないとしてまったく備えていないのです。
特に一番もめるは遺産分割ですが、一番分けにくいのが不動産です。ひとつしかない自宅を複数の相続人でどう分けたらよいのでしょうか。農地を転用して相続対策で建てたひとつしかない賃貸マンションはどうしたらよいのでしょうか。こういったことを相続人被相続人も当事者たちは深く考えて準備をすることなく相続を迎えることになります。大相続時代をこれから迎える中、相続トラブルは大きな社会問題になっていくでしょう。

しかも、今の日本には相続に備えるための社会的な基盤がまだ整備されていないのです。適切な相続の相談先がない、ということを次回見てみたいと思います。

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